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題詠マラソン2005

題詠マラソン2005 3/1~10/31
マラソン会場



001:声
聞こえるよ振り返るとき待つときに「よもぎよもぎ」こひびとの声が

002:色
どのやうな色でも冬の終はりにはかたいつぱうが褪せる手袋

003:つぼみ
春だろか秋なのだろか待つてゐるつぼみは今のこころに痛い

004:淡
ゆいいつのとほい時間をまきこんで雨にふくらむ淡水ぱある 

005:サラダ
夢よりも大事と思ふ朝食のサラダボールにあふるるハーブ

006:時
飛ぶ鳥の一瞬の影、屋久杉の千年の影、時は影をひく

007:発見
うつくしくほこり積れる古書店に岩波新書の『ゼロの発見』 

008:鞄
すれ違ふ学生鞄に揺れてゐるくまのプーさん きみも頑張れ

009:眠
雨ですと告げたきひともおそらくは相聞のそとに眠りたるころ

010:線路
始まりと終はりと継ぎ目 線路にも人生のやうなしづけさがある

011:都
東京都の西のはづれの北町に海を思つて開く南窓

012:メガホン
メガホンを覗いて見える青空はどんな位置でも丸くひろがる

013:焦
やさしさを焦がしてできたカラメルに似てゐるこひびとのくちづけは

014:主義
春は春、夏には夏のあしどりで犬と歩けばささやかな主義

015:友
横顔の美しかつた級友の真正面なる写真仰ぎぬ

016:たそがれ
それぞれの家路を急ぐたそがれに赤信号を渡りくる風

017:陸
半身を陸にとどめて半身は海となる後半生もよし

018:教室
かすみ草はフィラフラワーと知る初級フラワーアレンジメント教室

019:アラビア
辛すぎるペンネアラビアータきみと誓ひのやうに取り分けてをり

020:楽
ははそはの母のかそけき繰り言の楽は苦の種くはらくのたね

021:うたた寝  
思ひ出はうたた寝のなかいきいきと時計を磨く壮年の父

022:弓
放たれた矢を追ひかける弓音の余韻のなかに雲を見てゐる

023:うさぎ
やさしさを与へるときはやさしさに触れてみたいとき白いうさぎの

024:チョコレート  
あきらめるまへに持たない夢ばかり目をふせてホットチョコレート飲みぬ

025:泳
溺れない程度に泳ぐそのうちに水は許してくれるだらうか

026:蜘蛛
コンサートチケットを手に秋を待つ やさしい蜘蛛を歌つたひとの

027:液体
液体は音を知るらむ降る雨にかくした歌も思ひ出されて

028:母
ないものとあるものの線を引きながら水母たゆたふ秋分の海

029:ならずもの  
初句結句二三四句ままならずものがなしくて窓を開きぬ

030:橋
吊り橋の真ん中でふいにポケットの中身を全部捨てたくなつた

031:盗   
ポケットに盗難届そのままでいいことひとつあつてもいいか

032:乾電池
ワンコインショップに並ぶ乾電池 両極のある静寂として

033:魚
ひらひらとひとと歩けばこの街に咲く金魚草みな丈高し

034:背中
背中にはひとの寂しい皺があり見ることのない己のさびしさ

035:禁
海風にさらはれた夏の帽子は遊泳禁止区域に今も

036:探偵
街路樹の葉が落ちるたび陽当たりのよくなつてゆく探偵事務所

037:汗
汗をかき恥をかき歌をかいてみた大事なことを忘れぬやうに

038:横浜
不本意なことはさておき明日こそ横浜中華街で飲茶を

039:紫  
藤棚に藤の咲く見ゆ濃くあはく紫色の五行詩ながれて

040:おとうと
おとうとの歌を見つけておとうとと泣き笑ひして、じやあねおとうと

041:迷
来年も咲くまできつと気づかない金木犀は迷子のかをり

042:官僚
kannryouを官僚、、管領、完了と今日もローマ字変換に遊ぶ

043:馬  
あるときは母でも子でもなき顔の馬となり丘を駈け登りゆく

044:香
言葉にもなれぬ言葉ならば香れ ラストノートのIN LOVE AGAIN

045:パズル  
完成はさせなくてよい約束が繋がつてゆくジグゾーパズル

046:泥
すこやかな目覚めのやうに咲く蓮は泥のなかより白を掬ひぬ

047:大和
この国の名も知らず渡る鳥たちへ大和やまとと吹く風あるか

048:袖
袖口をたくしあげて会ひに来てはまた下手くそな嘘ばかりつく

049:ワイン
その時は新しかつた歳月がワインセラーにしんと眠りたり

050:変
雨の日もあつけらかんと晴れた日も空の高さは変はらぬものを

051:泣きぼくろ
いつの間に出来てゐたのか泣きぼくろ笑つてみても泣き顔に似る

052:螺旋
まつすぐに歩いて来たが足跡は時計回りの螺旋であつた

053:髪
移りゆく季節の風よかのひとの肩にこの髪触れさせよ、今

054:靴下
嬉しいと尾をふるものもの座布団の裏に靴下を隠したりする

055:ラーメン  
ラーメンを並んで啜る親しさに黄薔薇一輪ねだつてみようか

056:松
松の木の五言絶句、杉の木の七言律詩、花の巻く歌仙。 

057:制服
春の色だつたねと笑ひ合ふころは着ることのない紺の制服

058:剣
神無月 <解なし>の解を真剣に捜してゐたよ方程式の 

059:十字
ひとを待つ時間に知りぬ木犀の花のひとつは十字であると

060:影
ありふれた日の歩き慣れた道ゆけば尾を振つてゐる犬とその影

061:じゃがいも
じやがいもの花みな白く傾きて雪のあらしのアンデス山脈

062:風邪
幼児語で犬と遊びぬ風邪気味の気味のあたりの週末であるよ

063:鬼
月夜見に照る鬼瓦 どの過去も格好悪くて括弧でくくる

064:科学
四月には桜を浴びて会はむとぞ国立科学博物館に

065:城
拒むもの絶えたるのちの歳月をしづかに耐へるかたち(城壁)

066:消  
認めたり消してみたりと忙しい 判子で押したやうな日日でも

067:スーツ
この部屋にひとつ置かれてゐることの饒舌、銀のスーツケースの

068:四
四つ足になりそこなつて両の手に重い荷物をぶらさげてをり

069:花束   
花束のラフィアを解けばレザーファン、デンファレ、ガーベラ、増えてゆく色

070:曲
そんなにもたいしたことではないけれど素麺が湯に曲線となる

071:次元   
ニ杯目の芋焼酎にひと恋ひぬ次元低くも次元高くも

072:インク
言葉から消えさうになる詩のためにブルーブラックのインクジェットを

073:額
長身の額に触るる花を見き枝垂るることの無心放心

074:麻酔
頑張れぬわたしに麻酔、痛いとか苦しいだとか、頑張れわたし。

075:続
一日のおはりの「。」はどこに置く夢のなかまで続く地平線

076:リズム
通ひたるこころ鳴るなりしんしんと盆のまつりの太鼓のリズム

077:櫛
梳く髪に夜ごとの櫛の物語りつげの小花もしるし見せなむ

078:携帯
日食に墓標のごとく並びゐる写メりたがりのDocomoの携帯

079:ぬいぐるみ
ぬひぐるみ春の名前をもつものの午後はひたすら眠くてならぬ

080:書
書道家の手紙きちんとたたまれて鶴の飛来は明日かと思ふ

081:洗濯
朝の労も嗚呼ああカラスなかぞらに今頃ぬれてゐる洗濯物

082:罠
簡単に罠にかかると思ふまで犬はかなしく洗はれてをり

083:キャベツ
半分のキャベツはちやうど半分の水を重ねて売られてゐたり

084:林
よろこびは一本の立木かなしみも一本の立木同じ林の

085:胸騒ぎ
胸騒ぎを覚えるほどに雪はふりふいに響き合ふ冬のくだもの

086:占
レーサーの歌ほとばしる風の空鈴鹿の鳥は風を占ふ

087:計画
原つぱに犬はすずしくあらそひぬ都市計画の網かむる草と

088:食
うを食めば魚のかなしみ水飲めばみづのさみしさ充ちてうつそみ

089:巻
円卓のこの月明かりにはるばると語り明かさう春巻きの春

090:薔薇
歳月のひとりに会はず長雨にうどんこ病の薔薇の並びぬ

091:暖
根は土にふかく還りて暖かし木はどこまでも自由であるよ

092:届
遠浅の海より届く白き貝 問ひは答へに答へは問ひに

093:ナイフ
秋の空いづれの雲もナイフにて深手浅手を負ふて流るる

094:進
逃げ水は海までつづく嘘だよと進行方向変へるときいふ

095:翼
烏山、飛鳥山、ひばりが丘と翼焦がれて一世過ぎなむ

096:留守
ながくながく留守のこひびとその庭に薔薇咲くらむか木香の黄の

097:静
木香の冬のさみどりこの庭にさやさや咲けばこひびとの静

098:未来
ゆで卵するりとむけて輝きぬ日向にひとつ未来を置いて

099:動
うつくしく動かぬ天球座標図のあかい母星あをい父星

100:マラソン
ひた走るひとの足音晩秋のマラソンコースに草の種蒔く









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